剣璽等承継の儀(けんじとうしょうけいのぎ)とは、天皇即位の関連儀式の一つで、皇位を継承された証しとして、剣璽(けんじ)・御璽(ぎょじ)・国璽(こくじ)を承継される儀式です。時事通信の解説(2017/11/29)によると、昭和天皇の即位までは「剣璽渡御(けんじとぎょ)の儀」と呼ばれたが、今上陛下即位の際は宗教的意味合いがある「渡御(とぎょ)」は使わず、剣璽等承継の儀としたとのこと。このとき政府は「宗教儀式ではない」という解釈をとり、国事行為として、昭和天皇が逝去した1989年1月7日に行っています。ただ、当時は野党などから「憲法の政教分離に反する」として、国事行為とすることには反対意見もあったということです。
女性皇族がこの儀式に参列することを認めない政府方針を報じた記事を2本(時事通信3月17日、日経新聞3月15日)、転載します。赤字で示した個所にご注目ください。
■女性皇族、出席せず=剣璽等承継の儀-政府調整(時事通信 2018/03/17-15:20)
政府は、皇太子さまが新天皇に即位される来年5月2日に国事行為として行われる予定の「剣璽(じ)等承継の儀」について、平成の代替わりの例にならって女性皇族は出席されない形とすることで調整に入った。政府関係者が明らかにした。
剣璽等承継の儀は来年秋にかけて続く皇位継承の中心的儀式の一つで、皇位とともに伝わる剣や勾玉(まがたま)などを新天皇に引き継ぐものだ。明治時代に制定された旧皇室典範で皇位継承権が男系男子に限られて以来、女性が出席した例はないという。
前回は1989年1月7日の天皇陛下即位に伴い、国事行為として初めて行われた。首相や閣僚、衆参両院の正副議長、最高裁長官らが出席した。
天皇陛下の退位に伴う今回の皇位継承に際しては、出席する皇族に女性を含めるべきかが論点の一つ。有識者からのヒアリングでは「女子を含めた未成年皇族の参列が望ましい」との声も出たが、伝統を重んじる保守派の意見に配慮した。ただ、政府は閣僚などが女性の場合は参列を認める方向で検討している。
■皇位継承の儀式、女性皇族は参列せず 政府調整(日経新聞 2018/3/15 17:37)
政府は2019年5月1日の新天皇の即位に伴う皇位継承の儀式に女性皇族が参列しない形とする調整に入る。皇室典範は皇位継承権を男系の男子に限ると定めており、継承権を持たない女性皇族が参加した例は現行憲法下ではなく前例を踏襲する。
女性皇族の参列を認めないのは、皇位継承の証しである神器などを新天皇に引き継ぐ「剣璽等承継の儀」。首相や閣僚、衆参両院議長、最高裁長官らが参加する。
女性皇族が剣璽等承継の儀に出席できない法律上の規定はないが、前回の1989年1月の際は参列しなかった。神器などの引き継ぎにより皇位が移ることを象徴する場面に、継承権のない女性皇族が出るべきではないとの理由からだ。今回も、女性皇族が参加すると「政府が女性・女系天皇の容認に転じたという印象を与えかねない」(政府関係者)と判断した。安倍政権の支持基盤である保守派に配慮する面もある。
皇位継承権の問題とは関わりのない女性閣僚の参列は認める方針だ。前回は閣僚が全て男性だったため、女性の参加の是非を巡る議論は起こらなかったとみられる。今回は第4次安倍内閣に女性閣僚がいることを踏まえ、参列者に女性が含まれる状況を想定した。現行憲法が天皇を「国民統合の象徴」と定めていることを考慮した。皇位継承の直接の場ではない儀式には女性皇族の参列を認める方向だ。天皇陛下が最後のお言葉を述べる「退位礼正殿の儀」や、新天皇が即位後に初めて三権の長らにあいさつする「即位後朝見の儀」などには出る。
政府は退位や即位に関する儀式の準備委員会の第3回会合を近く開き、儀式の内容を盛り込んだ基本方針案をまとめる。新天皇の「即位の礼」の一部は簡素化する。即位を祝う「饗宴の儀」を平成の代替わりの時より縮小する趣旨を明記する。前回は4日間で計7回、国内外の約3千人の賓客を招いた。今回は回数と招待人数をいずれも減らす方向だ。政府関係者は「前回のような豪勢な式典は現代に似つかわしくない」と語る。新天皇や新皇后となる雅子さまの負担を和らげる狙いもある。
(記事引用ここまで)
赤字で示した部分=「伝統を重んじる保守派の意見に配慮」「女性皇族が参加すると、政府が女性・女系天皇の容認に転じたという印象を与えかねない」「安倍政権の支持基盤である保守派に配慮」から伺えるのは、安倍政権の支持基盤=女性天皇に反対する日本会議の圧力です。伝統を重んじるなどといいますが、こうした儀式や皇位継承からの女性皇族排除は、たかだか明治以降の伝統にすぎないものです。
Twitterには、この政府方針のおかしさを指摘し反対する怒りのツイートが多数、挙げられています。
●これはおかしい。愛子さんは現天皇の直系の孫だぞ。「現憲法下ではない」という理由付けも謎。男女平等だし、憲法に男系男子のことなんて書いてないのだから、憲法の理念からすれば、むしろ参列を認めるべきだろう。(3月15日/渡辺輝人@)
●こういう男女不平等も、日本会議の安倍・麻生の退陣後に検討し直すべきじゃないの?(3月15日/寺町東子@)
●父親が天皇になる儀式にも参列させないのか。愚劣だな。(3月15日/御宿蜜蜂@)
●現行憲法下での即位なんて1回しかないのに前例踏襲ですか。大嘗祭とかならともかく三権の長が列席するような式典にまで女性皇族参列認めないなんて時代にそぐわない。(3月15日/SUZUKI Hiroyo@)
●もうね今の時代に本気でこんなこと言うんなら、天皇制の廃止を真剣に議論した方がいいと思うよ。(3月15日/Minako@)
●愛子さまはずしが目的な気がする。何がなんでも女性天皇を避けたいんだろうね。(3月15日/ども@)
●紙面には「女性皇族が参加すると『政府が女性・女系天皇の容認に転じたという印象を与えかねない』(政府関係者)と判断した。安倍政権の支持基盤である保守派に配慮する面もある。」と書かれてる。内閣府や官邸スタッフにJC(日本青年協議会)出身者が多いって話、本当だろうね。(3月16日/Epica@)
●現行憲法下での即位なんて1回しかないのに前例踏襲ですか。大嘗祭とかならともかく三権の長が列席するような式典にまで女性皇族参列認めないなんて時代にそぐわない。(3月15日/SUZUKI Hiroyo@)
●酷い、女性皇族を出席させないなんて。(3月16日/須賀@)
●明治に制定された典範のせいで女性皇族が出席できなくなったのに、閣僚が出席するのは異常。新天皇の即位に汚点を残すことになる。(3月16日/otyakan100)
●[伝統を重んじる保守]日本の「伝統」とは、女性の存在を無視して、居ない者扱いすることなんだね。恥ずかしくないのか?(3月16日/peridot@)
●「有識者からのヒアリングでは『女子を含めた未成年皇族の参列が望ましい』との声も出たが、伝統を重んじる保守派の意見に配慮した」、つまり愛子さまの参列を薦める意見も出たが政府は拒否したと。(3月17日/Epica@)
●同じ女性でも、皇族の立ち会いはダメで閣僚ならOKだって。イミフ。(3月17日/子ヤギ牧場・のんびりツイート@)
●たかだか明治以降の因習にいつまでもしがみつくな。閣僚の女性は参列出来て、女性皇族は出席出来ないとかおかしすぎるだろう。ましてや敬宮愛子内親王殿下は、直系の皇女様だぞ。(3月17日/皿うどんボンバー@)
●ほんとにがっかりです。女性閣僚の方々これで本当にいいんですか?私は男尊女卑を支持しますと言ってるのと同じですよ。(3月17日/のりまき@)
●世界に堂々「女性差別は日本の伝統CoolJapan」宣言。(3月17日/鈴木昌司@)
●昭和から平成になるとき。竹下内閣の閣僚は全部男性で、女性閣僚が参加するかどうかが問題にならなかった。未婚の女性皇族も紀宮(19歳)ぐらいで彬子女王7歳、瑤子女王5歳、承子女王2歳、典子女王生後6ヶ月近く。一方男性皇族は三笠宮家に4人、常陸宮、礼宮、浩宮計7人の成年皇族がいた。(3月17日/peridot@)
●昭和の終わりは明治の皇室典範通りに女性皇族が立ち会わなくとも不思議ではなかった。現在は女性閣僚が立ち会うのに、女性皇族だけ排除。男性皇族は2人、常陸宮と秋篠宮しかいないのに。女性皇族は三笠宮系4人、秋篠宮系2人、そして新天皇の一人子も17歳だ。男尊女卑の象徴としての天皇制の恥。(3月17日/peridot@)
●伝統に一切ない称号「上皇后」と「皇嗣」や「立皇嗣」を容易く認めたのに、承継の儀は「伝統を重んじる保守派の意見に配慮」とはダブスタが酷すぎる。(3月18日/Evening_Star5@)
●この記事ってさ政府方針を婉曲に批判してるんだよねきっと。有識者の女子を含めた未成年皇族の参列が望ましいという意見はズバリ敬宮を参列させろという事でしょ?それを、国民の大半は女系容認であることも無視して、一部の男系男子派に配慮して止めたというんだもの。(3月18日/amenbo@)
●このニュースが、ヤフコメ含めた大勢の国民に大きな疑問を抱かせているようですね。ここから「秋篠宮立コウシ反対、敬宮様を女帝に!」という声に繋がると嬉しいです。(3月18日/12月1日生まれのアマテラス@)
●愛子さまもそうだけど、即位なさる徳仁天皇の奥様・雅子さまが儀式を見届けることができないっておかしい。(3月18日/Epica@)
これらのツイートが的確に指摘するように、女性皇族を排除する政府方針は伝統的意味も合理的意味も全くないものです。
こんなやり方はおかしい、反対します、という抗議の声をあげましょう!
・抗議のメールを送る
e-Gov(イーガブ/電子政府)のメールフォームから複数の省庁を選んで一斉に送れます。
・各府省への政策に関する意見・要望
・抗議のハガキや手紙を送る
<首相官邸>〒100-8968 東京都千代田区永田町1-6-1 内閣官房内閣広報室
さらに効果的な反対方法があれば、どうぞご教示ください。
■退位と即位に関する政府方針を追う記事
参考として、退位と即位、立皇嗣の儀式に関する時事通信社の記事を挙げます。
ほかにも参照するべき記事があれば、どうぞご教示お願い致します。
天皇陛下が「お言葉」=首相の感謝表明に続き-退位儀式の概要決定・政府準備委(時事通信 2018/02/20-19:13)
政府は2月20日、天皇陛下の退位と皇太子さまの新天皇即位に伴う式典準備委員会(委員長・菅義偉官房長官)の第2回会合を首相官邸で開き、焦点となっていた退位の儀式の概要を決めた。名称は「退位礼正殿(せいでん)の儀」とし、憲法上の国事行為として来年4月30日に開催。首相の発言に続いて陛下が「お言葉」を述べられる。
退位の儀式は光格天皇以来約200年ぶり。憲政史上初めてで、伝統的な儀式を天皇の政治的行為を禁じた憲法に抵触しない形でどう行うかが論点となった。退位礼正殿の儀は、法令で用いる際は「退位の礼」とする。皇居にある正殿「松の間」で開催し、憲法上の疑義が生じかねない譲位宣言「宣命(せんみょう)」は行わず、首相が陛下の退位を説明して感謝を表明した後、陛下がお言葉を述べる。平安時代から伝わる儀式書は天皇と皇太子がそろって入場すると定めているが、皇太子さまは他の皇族の列に加わる。
皇位のしるしとされる「剣」やまがたまの「璽(じ)」の扱いは、侍従が高くささげながら陛下とともに松の間に入退室する形式を採る。光格天皇の譲位の際は、皇位継承と同時に「剣璽」が新天皇の下に移されたが、陛下から皇太子さまに譲り渡せば憲法との整合性が問われかねないため、引き継ぎは皇太子さまが即位する5月1日の「剣璽等承継の儀」に一本化する。退位礼正殿の儀には、皇位継承権のない女性皇族の立ち会いも認める。
2月20日の会合では、秋篠宮さまが皇位継承順位1位の「皇嗣(こうし)」になったことを示す「立皇嗣(りっこうし)の礼」を2020年に国事行為として行うことも決定。国民の安寧や五穀豊穣(ほうじょう)を祈る儀式で宗教的性格を有する「大嘗祭」は、政教分離原則に抵触しないよう、平成の代替わりの例を踏襲することを確認した。天皇陛下在位30年の記念式典を来年2月24日に行うことも決めた。
即位の礼、2019年10月で調整=大嘗祭と一定間隔-政府(時事通信 2018/01/11-18:26)
政府は、皇太子さまの新天皇即位を内外に示す「即位の礼」の中心的な儀式である「即位礼正殿(せいでん)の儀」について、2019年10月に行う方向で調整に入った。皇位継承の際の重要な儀式「大嘗祭」は同年11月14日か同23日の実施が候補に挙がっており、皇室の負担を考慮して一定の間隔を空ける方針だ。政府関係者が1月11日、明らかにした。
即位の礼は、五つの儀式から成る。即位礼正殿の儀のほか、三種の神器を引き継ぐ「剣璽(じ)等承継の儀」、三権の長らと会う「即位後朝見の儀」、パレードで国民に即位を披露する「祝賀御列(おんれつ)の儀」、外国元首らを招待する「饗宴(きょうえん)の儀」がある。剣璽等承継の儀と即位後朝見の儀は、皇太子さまが即位される2019年5月1日に行う見通し。残る三つの儀式を同年10月に実施する方向で検討している。
昭和から平成に移る際は、即位礼正殿の儀と国民の安寧や五穀豊穣(ほうじょう)を祈念する大嘗祭が、いずれも1990年11月に行われた。天皇陛下が祝福を受けられる宴は、饗宴の儀が計7回、大嘗祭に伴う「大饗(だいきょう)の儀」が計3回、それぞれ催された。連日儀式や行事が相次ぎ、皇室や宮内庁の負担が大きかったとされる。
剣璽等承継の儀、2019年5月1日=大嘗祭は11月(時事通信 2017/11/29-20:31)
皇太子さまの新天皇即位に伴い、三種の神器などを引き継ぐ「剣璽(じ)等承継の儀」が2019年5月1日に行われる見通しであることが分かった。政府関係者が明らかにした。天皇陛下が退位される期日に関し、政府は「2019年4月30日退位、同年5月1日即位・改元」とする案で最終調整しており、即位と同日に行われることになる。
「剣璽(じ)等承継の儀」は、皇位を継承した天皇に、「剣璽」とともに「御璽(ぎょじ)」、「国璽(こくじ)」が承継される儀式。今の天皇陛下が即位した際は、昭和天皇が逝去した1989年1月7日に憲法7条で定める国事行為として行われた。今回も、即位が2019年5月1日となれば、政府は同日に儀式を行うことで調整を進める方針だ。
また、皇位継承の際の重要な儀式である「大嘗祭」については、2019年11月に行う見通し。天皇陛下が即位後、国民の安寧や五穀豊穣(ほうじょう)を祈念するもので、平成では即位した翌年の1990年11月に皇室の行事として行われた。
政府は、天皇陛下の退位と皇太子さまの即位の期日決定の前提となる皇室会議を12月1日に開催する。会議を経て、同月8日にも閣議決定する方針。同月5日の閣議には皇室会議の開催結果を報告することにしている。
(関連記事の引用ここまで)